辻井伸行さんの演奏情報をマイコーチからいただき、娘と二人聴きに行ってきました。辻井さんの演奏は今回で2回目です。前回は日本の若手オーケストラ楽団との演奏会でしたが、今回はイギリス王室に正式に許可されたロンドンを拠点としているロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との演奏会でした。指揮者のヴァシリー・ペトレンコ氏とは何度も共演を重ねてこられた間柄とか。今回はラフマニノフの曲を演奏するらしい。そんな事前情報と共に行ってきました。
プログラムを見てみると、前半がラフマニノフ、後半がチャイコフスキー。辻井さんはラフマニノフを演奏されるようです。どちらもロシア出身の作曲家。そして冒頭で演奏される曲を作曲したグリエールという方は、ウクライナ出身の作曲家なのだとか。今日へのメッセージとして組まれたプログラムなのかと思いきや、このプログラム構成を考えたのはもっとずっと前だったのだそう。それがまさに今に相応しい内容となったことに不思議な力を感じます。
辻井さんの登場に拍手喝采。佇まいや仕草に思わず微笑んでしまいます。今回のラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30」という曲は、あらゆる協奏曲の中でも最高難度の曲だそうで、身を乗り出して見入ってしまうほど、辻井さんに釘付けになってしまいました。この40分近い演奏を楽譜なして記憶されていることも素晴らしいと思いますし、その超絶技巧は同じ人間とは思えませんでした。本当にすごい。人間はこれだけのことができるのだと見せていただいているような気持ちになります。途中何度もポケットからハンカチを取り出して汗を拭かれていました。
割れんばかりの拍手に辻井さん4〜5回の登場。そしてアンコール演奏。美しいメロディー。聴いたことがあるけれど曲名が分からない!あとで調べてみると、ヴェートーベン「ピアノソナタ第8番「悲愴」より第2楽章」とのことでした。うっとりするような綺麗な曲でした。こんな曲が弾けたら良いな。
休憩の間に、後半演奏されるチャイコフスキー「悲愴」の4つの楽章の構成解説をプログラムで読んでおいたおかげで、演奏の味わいがより深くなりました。やはり知識があると楽しむポイントが増えます。全く異なる4つの表情。起承転結のように、第3楽章が一番盛り上がり、第4楽章は静かに静かに終わっていきました。息を呑むほどの静けさで、拍手のタイミングに迷いました。最後のコントラバスが鼓動のようで、まるで命が終わっていくよう。チャイコフスキーはこの曲の初演の9日後に病気で急死したのだそうです。なんだかミステリアス。
今回、2階席の前から2列目の席だったので、上から俯瞰するように演奏家の姿を見ることができました。注目して見たのは指揮者です。どのタイミングで、どこに指示を出すのかな?強弱はこうやって表現するんだ。そんな視点で観察していたら、指揮者の方の動きがとても興味深かったです。この演奏の行方を握っているのはこの方なんだなぁと、指揮者の重要性が少し分かったような気がしました。
学校帰りの娘は寝るかと思いきや、しっかりと聴き入っていたようです。「すごく良かった!ありがとう!」と感動してくれていて、私も娘と一緒に楽しめる幸せを感じました。私も子供の頃から両親によく演奏会に連れて行ってもらいました。あの頃は知識が全然ないまま聴いていて、今のような楽しみ方はできませんでしたが、それでも良い音を聴かせてもらっていたことはきっと私の糧になっていたでしょう。
良い音楽に触れた、良い夜でした。
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