夫との最初のデートらしいデートの行き先は新国立美術館でした。なぜそこに行くことになったのかはよく覚えていないけれど、新国立美術館の設計者である黒川紀章さんの展示を見たことは覚えています。美術に全く興味がない夫ではありましたが、その展示は建築系だったからか興味深そうに見ていた記憶があります。
あれから16年ほど経ちました。その間に一緒に美術展に行ったのは1回だけ。フェルメール展だったように思います。もう8年前くらいになるのではないでしょうか。
今日は14年目の結婚記念日。夫が休みを取ってくれました。以前はそんなことをする人ではなかった(忙しかったこともあります)ですが、人は変わるものですね。私が好きなところへ行って良いということで、美術鑑賞コースを選ばせていただきました。ちょうど先月模写をしたディビット・ホックニー展を観に行くことに。まだ完成していないですし、展覧会を観てから描くと、作品への理解も深まりそうだと思いました。
展覧会のはじまりは、いきなり今模写をしている「春の到来」というタイトルのラッパスイセンを描いた作品でした。コロナが始まってすぐの頃にiPadで描かれ世界に公開された作品。「春が来ることを忘れないで」というメッセージと共に、未曾有の脅威に震えていた人々へ届けた作品でした。ホックニーが高齢になってから始めたiPadでの作品。好奇心の旺盛さと、探究心が感じられます。その他にも実験的な試みの作品が続きました。前回鑑賞したマティスと同様、ホックニーも探究家の要素が強い画家だったのだなと思います。生涯をかけて何かを探究する人生って素敵だなと思いました。
身近なものをモチーフにしたホックニー。友人、日常の光景、庭の景色、身近にある自然等、対象は素朴です。それが夫にはヒットしたようです。特に春夏秋冬を表現したコーナーでは、同じ景色での四季の移ろいが一つの空間で観ることができ、自然の美しさを目の当たりにしました。また、キャンバスを何十枚も使って描いた、見上げるほどの巨大な絵画「ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作」では、夫に所縁のある家の前の景色に似ていると親近感が湧いたようでした。そういえば私も、昔住んでいた家の絵を描いたことがありました。一番好きな秋の景色と共に。自分の思い入れのある風景を描くことで、当時の記憶をパッケージできたような感覚がありました。その絵は母にプレゼントしたのでした。
夫が好きなあの景色の絵を、そのうち描いてみるのも良いかも。大切な風景を描く。そんなシリーズも良さそうです。
14年目の結婚記念日は、思いの外充実した、二人にとって心地よい日となりました。
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