ハンカチの魔法1

終業式の日。


朝、2人を見送った後、お別れのハンカチと息子のアルファベットで作ったカードを添えたプレゼントを学校に届けに行った。


ちょうど終業式が教室で放送を聴く形で始まったところで、厳かな雰囲気の中入るに入れず、廊下でしばし待機をした。


今日でこの光景を見られるのも最後なんだな、と思いながら、この場を共有させてもらえていることに感謝の気持ちが湧いてきた。


息子は座って静かに聞いていた。

最後に少しだけ笑ったけれど、こんなにちゃんと参加できるようになったんだなと、確かな成長を感じた。


先生にプレゼントの入った袋を渡して教室を去った。


その足で校長先生にご挨拶をしに行った。

私たちの希望にできる限り応えてくださったこと、息子にとって何が良いかを真摯に考えてくださったことへの感謝の気持ちを伝えた。

「お母さん頑張りましたね。◯◯くんにとって良い選択だと思います。よく決断されましたね」と言っていただけた。


下校の時。校門で待っていると同じクラスの子達がわーっと出てきて私の周りに集まってくれた。

「ハンカチありがとうございました!」

キラキラした沢山の瞳に囲まれて、私は人生でこんな光景を目にすることがあるだろうかと思った。


担任の先生と話した時、先生が涙をポロポロこぼされた。

「お母さんすごいなぁって本当に思いました」と。

私も胸に込み上げるものがあって、涙が溢れ、校門前で先生と2人ポロポロ泣いた。

この先生でなければこの1年間はなかったと、感謝の気持ちを伝えた。


明日の卒業式のために、校門の前には綺麗な花の咲いた植木鉢が沢山並んでいた。

その花の周りに1羽のアゲハ蝶がヒラヒラと飛んで、ずっとそこから離れなかった。

息子はそのアゲハ蝶をずっと見ていた。

みんな下校して、校門も閉まり、先生方がお昼ご飯を買いに出掛けていき、その先生方が戻ってきてもまだ息子はそのアゲハ蝶を見ていた。

私もそんな息子をずっと見ていた。

主事さんが「お母さんと2人で写真を撮りましょうか?」と声をかけてくれた。

嬉しかった。校門の前で2人で写真を撮ってもらった。


2年前の入学式のことを思い出した。

入学式の後、体育館から教室へ戻って先生の話を聴く時に大泣きしてしまった息子。

入学式を頑張り抜いて、やっと帰れると思ったのにまだ帰れないと分かり、その状況に適応できずわんわん泣いていた。

帰る時に半泣きの息子とこの同じ場所で写真を撮った。

あれから2年が経った。


ようやく家に向かって歩き始めた時、図工の専科の先生が声をかけてくれた。

低学年の図工は担任の先生が受け持つため、息子と直接関わることはなかった先生だった。

通級の先生が息子のハンカチとカードを早速学校に飾ってくれたそうで、それを見ました、とのこと。

「直接指導することはなかったけれど、とても良いものを持っていると思います」

そう言っていただけた。

思いがけないギフトのような言葉をもらって嬉しかった。



続く。





365日の展覧会

はは、むすめ、むすこのアートな日々

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