夕食を食べている私。食器を洗っている母がふとその手を止めて、話し始めた。
「Y(私の姉)やM(私)を見ていると、本当に子供たちによくしているなと思うの。私は全然できていなかったなって。だから申し訳ないと思ってるのよ」
その時私は、夕食を食べながら明日の予定について夫とLINEでやり取りをしていて(ちょっと揉めていて)、あまり母の話に耳を傾けていなかった。でも、とても大事な話をされた自覚があった。なのに、なんだか恥ずかしくて、真正面から受け止めることができなかった。
「うん、分かった。今これやってるから」と、軽く流してしまった。「そう、ごめん」と母は言って、食器洗いに戻った。
PCの画面を見つめながら、私の心はもうそこになかった。とても大事なことを伝えられた気がした。ずっと言って欲しかった言葉。ずっと私の中にあったわだかまり。
子供を産んでから、母と過ごす時間が密になって、息子のことでチームになることになって、イライラすることが増えた。「なぜ、どうして、あの時もっと」。どうしようもないイライラが湧き上がり苦しかった。
もっと距離があって、あっさりした付き合いができたなら。良い母と娘でいられたのに。そう何度も思った。それを私たちにさせなかった息子の存在。それは私たちが乗り越える必要があったから。息子はきっと、私と母をとことん向き合わせてくれたのだろう。
その言葉を聴いてから、私の中で母へのイライラがスーッと消えた。今までだったら気になった行動も気にならない。そういうものだよね、と受け流せた。不思議だ。
母の言葉は、私がもう何年もずっと、欲しかった言葉だったんだなと思った。もうそれで充分。その一言が聴けただけで、私は充分だと思ったのだった。
そして残った気持ちはたったひとつ。「ありがとう。これからは楽しい時間を過ごそうね」だった。
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