ハンカチの魔法4

夕方になって、1人、また1人と帰って行った。

息子と私は最後までいた。

帰り道が同じ方向の子3人と一緒に帰った。

そのうちの1人の男の子は、引っ越しのため転校する子だった。


その男の子はクラスの中でも一番人懐こくて、私によく話しかけてくれた子だった。

私はその子の存在にも助けられていた。

だからその子が転校すると聞いた時、とても寂しい気持ちになった。



今朝、転学の挨拶で学校に寄った私は、玄関でたまたまその子に会った。

保健室に出席簿を届けに行く係のため、その子は玄関に降りてきたのだった。


「今まで仲良くしてくれてありがとうね」と挨拶すると、


「◯◯ちゃんのお母さんてなんていう名前?」


と突然聞かれた。


「下の名前?」


「うん」


「◯◯だよ」



「へぇ。良い名前だね」



すごく嬉しかった。

すごくすごく嬉しかった。


名前を褒められたからだけではない。


私の存在を承認されたような気持ちになったからだ。


息子のお母さんという存在だけではなく、1人の人間としてちゃんと見ていて、相手を知ろうとしてくれてるんだなぁと。



公園の帰り道、その男の子は歩きながらこう言った。


「僕、◯◯ちゃんのお母さんの名前覚えたよ。◯◯だよね!」


嬉しそうにそう言ってくれた。



何度も何度も手を振った。


次に会える時がもし来たら、きっと大きくなってるんだろうなぁ。

この小さい背丈の姿は今だけなんだろうなと思いながら、彼の姿を目に焼きつけた。


ありがとう。

またね。

またきっと会えますように。


彼の後ろ姿を見送りながら、そう心の中で祈った。



続く。



365日の展覧会

はは、むすめ、むすこのアートな日々

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