5分間の家出。

 満月の夜。夫とのふとしたやり取りがきっかけで、どうしようもなく外へ飛び出したくなった。

「外の空気を吸ってくる」

そう娘に伝えて、素足にサンダルで外へ出た。

寒い。

でももう戻れない。

空を見上げると、綺麗な満月。

そうか、今日は満月だったんだ。

50mほど離れたところにある、コインパーキングのガードレールに腰掛けた。

そんな至近距離に落ち着く自分がちょっと可笑しい。でも家を出たいわけじゃない。ただ、たまにどうしようもない不自由さを感じることがある。そこから飛び出したくなったのだ。

薄着で素足にサンダル。コインパーキングのガードレールに佇む中年女性は滑稽だったかもしれない。

でも自分の気持ちを優先できた。
そのことに清々しさを感じた。
満月の光に照らされて、心のしこりを手放せたような気がした。

もっと自由でいいよ。
そんなに背負わなくていいよ。



寒いから帰ろう。



夫と息子はお風呂に入っていたし、誰も気づいていないだろう。


満月の夜、私の5分ほどの家出は終了した。


365日の展覧会

はは、むすめ、むすこのアートな日々

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