自閉症の息子と靴を買いに行った話。

 息子のスニーカーを買いに、久しぶりに息子と一緒にお店に行って、足の計測をしてもらった。いつもは娘のスニーカーを買いに行った時、娘の足を計測したついでに、同サイズのものを息子にも買っていた。というのも、二人の足のサイズはほぼ同じだったからだ。そして、息子に足の計測をさせるのはハードルが高いと感じていた。休日の子供靴売り場はいつも混雑していて、待ち時間が長い。そして指示に従ってじっとしたり、店員さんのいう通りに動くことは、息子にはできなくはないだろうけれど大変に感じていた。娘のサイズで息子の分も一緒に買えてしまうのであれば、それで良いだろうと思っていた。

 けれど最近は娘が忙しくてなかなか一緒に買い物に行けない。息子も成長しているし、挑戦してみようと思った。息子の足のサイズは23.5㎝。子供靴売り場ではサイズがあるかどうかというギリギリのラインだ。周囲にはちびっ子たちがほとんどの中、息子は間違いなく一番大きい。

 店員さんに呼ばれて足の計測をする。店員さんが息子の足を触ると、息子はケラケラと笑い出した。くすぐったいのだろう。その笑いはなかなか止まらない。周りのちびっ子たちの方がしっかり計測してもらっている。一際身体が大きい息子が、身体をくねらせながら笑っている姿は、目立つ。こういう経験は、もう何度となくしてきている。そう、私たちは目立つのだ。

 きっと店員さんも感じているだろうと思った。この子、なんかちょっと違うなと。なんとなく、いたたまれない気持ちになる。何度となく願った普通。日常のことが普通にできたら、どんなに良いだろう。

 今の私は、昔よりは開き直れているので、息子はこういうものだと思っている。それでもやっぱりどっと疲れる。もっと落ち着いて買い物できたら良いのにな。

 会計の時に店員さんにこう言った。「慌ただしくてすみません」。すると店員さんが笑顔でこう言った。「全然ですよ。元気で明るい良いお子さんだなぁって思いました。こちらまで元気をもらいましたよ」

 自分の顔がくしゃっとなるのが分かった。嬉しくて。そんな風に息子のことを受け止めてくれるのが、嬉しかった。優しい人だなと思った。

 きっと肩身が狭いと思っている当人たちより、周りはもっと寛大なのかもしれない。そうじゃない人もいるかもしれないけれど、心優しい人たちは、きっとそっと受け入れてくれている。そういう人ほど何も言わない。

 もっと堂々としていたらいいし、ありのままでいたらいい。

 帰り際、私は振り返って、もう一度その店員さんにお辞儀をした。賑やかな休日の百貨店で、私はいつもより疲れていなかった。息子の新しいスニーカーを見る度に、私は店員さんの笑顔と、この気持ちを思い出すだろう。

息子に描いてもらった新しいスニーカー。もうちょっと丁寧に描けるようになると良いなぁ。

365日の展覧会

はは、むすめ、むすこのアートな日々

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